【お知らせ】新講座のご案内① 詩編に聴く―聖書と典礼の研究 田中裕先生(4/22開講)
聖グレゴリオの家 宗教音楽研究所研究部門主催 連続講義
詩編に聴く―聖書と典礼の研究
ヘブライの民は詩と音楽によって神と対話してきました。聖書全体の中枢をなす詩編はキリスト教の典礼において根源的な泉となっています。聖書注解と典礼的考察を通して詩編を多角的に学んでいきましょう。
講師:田中裕(聖グレゴリオの家理事、上智大学名誉教授)
2025年春学期日程
1)4月22日
講義の目的・詩編のテキストと表題・ユダヤ教・カトリック教会・正教会の典礼における詩編の位置づけ
2)5月13日
グレゴリオ聖歌の伝統:詩編51に聴く―灰の水曜日の懺悔と賛美
3)5月27日
詩編118に聴く―ペテロの証し―受難の民の希望
4)6月10日
詩編148に聴く―アッシジの聖フランシスコの祈り・ラウダート・シに寄せて
5)6月24日
詩編150に聴く―復活祭のアレルヤ唱にとアウグスチヌスの詩編注解
時間: いずれも11時~12時30分
場所: 聖グレゴリオの家・ハッチハウス
連続講義ですが単発の参加も可能です。ご都合に合わせてお越しください。やむをえず欠席なさる方は講義録画と資料の配信をうけることができます。
受講料:2,200円 各回とも当日受付でお支払いください。
現金のみの扱いになります。
メールにてお問い合わせ・お申し込みください。
メールアドレス: info@st-gregorio.or.jp(聖グレゴリオの家事務室まで)
講義要項
けふよりは詩編百五十 日に一編読みつつゆけば平和来なむか
(南原繁歌集『形相』所収)
80年前、無教会キリスト者の内村鑑三の平和主義から大きな影響を受けた南原繁の読んだこの短歌は、東京大空襲の戦禍のさなかに詠まれたものですが、それはまた、敗戦後の日本が、平和な国として再出発するには何をなすべきか、その理念と祈りを聖書の詩編にもとめたものでもありました。内村鑑三と南原繁の平和への願いを想起しつつ、『詩編に聴く―聖書と典礼」という連続講義を行う予定です。この講義は内村鑑三の連続講義『聖書の研究』を手本としていますが、私は、内村があまり問題としなかった「(ユダヤ教・東方キリスト教・西方キリスト教の)典礼のなかの聖書」という視点をあらたに付け加えました。
カトリックの「教会の祈り(新しい聖務日課)」では、詩編が中心的な位置を占めています。主日の典礼、毎日の聖務日課(時課)に参加する者は、詩編150編のすべてを、様々な形態で、朗唱することになるでしょう。キリスト者の祈りは、ユダヤ教の典礼を母体としていますが、排他的な民族主義を克服して、すべての民と被造物の救済を目指すカトリック信仰に基づいています。
聖グレゴリオの家で歌われるグレゴリオ聖歌のラテン語テキストは、初代のキリスト者の世界の共通語であったギリシャ語聖書(七〇人訳聖書)に基づいています。新約聖書のなかの旧約聖書の引用は、基本的には詩編も含めて、この七〇人訳ギリシャ語聖書によりますので、新約時代のキリスト者の信仰を理解するためには、ユダヤ教正典のヘブライ語テキストだけでなく、ギリシャ語テキストに基づくキリスト者の詩編解釈の伝統を知ることも必要となってきます。
私の連続講義は2025年の復活祭の後から開始し、全部で十回を予定しています。
詩編の構成・作者・表題・内容の分類・キリスト者の詩編解釈の伝統・近代語訳(英語欽定訳など)日本語訳の比較など、詩編釈義に伴う様々な諸問題を論じる予定です。カトリック教会の典礼ではグレゴリオ聖歌が中心的な位置を占めますが、この講義では、復活祭に関連する詩編、とくに「詩編51に聴く―灰の水曜日の懺悔と賛美」「詩編118に聴く―ペテロの証し―受難の民の希望」「詩編148に聴くーアッシジの聖フランシスコの祈り・ラウダート・シに寄せて」「詩編150に聴く―復活祭のアレルヤ唱」など、カトリックの典礼と聖務日課に関連の深い詩編を幾つか選んで詳しく解説します。また、七〇人ギリシャ語訳聖書の伝統を継承する正教会の典礼で詩篇がどのように歌われているかを知るために、日本でもよく知られているラフマニノフの「晚禱(徹夜禱)」を手引きとして、その背景にある正教会の典礼で歌われる詩篇と新約聖書の賛歌を解説します。(田中裕)
秋学期予定
6) 正教会の伝統―ラフマニノフの「晩禱」を手引きとして
7) 詩編1,2に聴く―キリスト中心的な釈義の伝統
8) 新約聖書の賛歌::シメオン賛歌と聖母(テオトコス)賛歌
9) 6つの詩編の詠唱と復活賛歌
10) 日本のキリスト者と詩編
ご案内のチラシはこちらから
ぜひともこの機会をご活用ください