【報告】聖グレゴリオの家における2次予選の4日間(9/11-14)

第9回武蔵野市国際オルガンコンクールは、聖グレゴリオの家が2次予選の会場となり、9月13日(水)と14日(木)の両日開催された。

その2日間と、11日・12日の2日間は準備に充てられていた。ここでは聖グレゴリオの家で見られた4日間の舞台裏を紹介しておきたい。

2階のオルガン練習室にむかうところには案内板が立てられていた

◆コンクール出場者たちは練習時間の確保に余念なし!?

まず、コンクールに出場するオルガニストたちの様子を記しておこう。

出場者は、武蔵野市民会館のオルガンを離れ、2次予選では聖堂のアーレントオルガンを使用する。リハーサルで使用可能な時間は2日間で2回。合計4時間が割り当てられていた。

まずは練習日に充てられた2日間。初日の11日は、17時からワークショップが開催されるため、2次予選の演奏順で朝9時から①番から③番まで3人が充てられ、アシスタントと共に2時間半、順次リハーサルを行った。

12日も同様で、9時から⑤番から⑧番まで5人がリハーサルを行った。

もちろん、割り当てられた時間以外に練習すること環境が整えられていた。聖グレゴリオの家の研究棟には、ガルニエ、オーベルタン、ザイフェルト&ケヴェラールの3人が製作した3台のペダル付き練習用オルガンを常設している。練習室は防音措置がなされているものの、これらの使用は20時までとしていた。

4日間、3台のオルガンには予定表(写真)に名前を書き込み、それぞれが与えられた2時間の枠で黙々と練習を重ねていた。もちろん、本人がキャンセルしない限りフル稼働していた。

練習用オルガンスケジュール表(ザイフェルトオルガン前)

コンテスタントたちはスケジュールの都合で、練習と練習の合間に長い空き時間が生まれてしまう。早めに戻ってホテルで過ごすことも可能だが、それぞれにここでの時間の過ごし方を見つけていたようだ。皆さぞかし緊張しているだろうと想像していたが、2日間彼らが休憩している姿をたびたび見かけたが、そうでもなく、和気あいあいとした雰囲気が感じられた。

聖グレゴリオの家のすぐ近くには武蔵野の雑木林など多くの自然が残っている。そこに休憩するスペースが少ないうえ、連日猛暑が続く中で高温多湿な日中はかなり蒸し暑く、屋外散歩や日陰での読書はかなり厳しい状況だった。外出を諦めて、冷房の効いた食堂で読書したり、演奏前の準備として楽譜を作成したり、仮眠をとるなど、この機会を通じて初めて知り合ったオルガニストたちが親しく話し込んでいたり、こちらもほっこりする風景が見られた。

2日目のみ、聖堂における5人目の練習終了時間は21時30分としていた。主催者のスタッフはオルガニストたちのタイムスケジュールを管理し、練習が終了するまで見守っていた。

2人のアシスタントとともに夜遅くまで練習が続いた

 コンクールの2日間の風景

コンクール2次予選は1日目4人と2日目4人が演奏するスケジュールが組まれた。

コンテスタントは演奏順に、当日の9時から1時間半刻みでアーレントオルガンで練習する時間割りだった。早い時間帯でやって来たオルガニストはそれ以外の時間も、可能な限り練習用オルガンで練習する姿が見られた。

一方主催者は朝から、エントランスのロビーにバナースタンドを立てたり、受付用テーブルを用意するなど会場の設営を行うほか、後述するライブ配信チームが早々から準備を進めていた。

聖堂では、2人のアシスタントがレジストレーションを操作するため、カメラの前を遮る可能性があることや、操作しない時に座るのに適当な高さの椅子を探すことが必要になり、こちらも適当なものがあるかどうか少々気をもんだ。

コンクールの審査員7人は、14時過ぎにマイクロバスで揃って会場入りし控え室で待機した。そして会場となる聖堂内の一角に設けられた審査員席に着席した(写真)。

聖堂の定員は通常120名。審査員席、関係者席などを設置するため座席数は限定され、主催者が販売したチケットの枚数は60席分。コンクール通し券や2次予選の2日間券などを利用する方も多く、連日来場した顔も多く見られた。さらに当日券として追加販売されたのは5枚だけだった。

開場は30分前の15時30分。その時点で多くの来場者が並んでいた。主催者はグッズ販売のコーナーを設けたほか、我々もアーレントオルガンでの演奏を録音したCD、クリアファイル、ボールペンなどを販売した。

設けられた奏者が入場すると大きな拍手で迎えられた。進行上の諸注意がアナウンスされたほかは、だれ予定通り16時からコンクールが始まった。演奏会課題曲は4曲で、持ち時間は35分だったが、だいたい30分で終了した。前半の2人が終わると15分間の休憩となった。

両日ともほぼ同じスケジュールで、14日に全ての演奏が終了したのは18時30 分頃、その後成績発表が19時15分から行われた(写真)。ただ、成績発表のライブ配信はなく、発表直後に結果がSNSとウェブサイトで発表された。

審査発表時の動画は下のURLから視聴できますのでご覧ください(1分19秒)。

https://youtu.be/k4dOARJ48sQ

発表後は、本選に進む5人は次の予定についてガイダンスがあるため、別の部屋に移動した。惜しくも進出を逃した3人には、聖堂のあちこちで、審査員が本人に対して個別に講評を伝える風景が見られた。

 ◆コンクールに欠かせないライブ配信のサポート

コンクールの模様は、主催者のオルガンコンクール特設YouTubeサイトから無料でライブ配信を視聴できるサービスを提供した。そのため、今回は業務を請け負っている専門業者の担当者が、数ヶ月前から当研究所を訪れ、照明、電話回線、電源のチェックなどを行っていた。

普段は司祭がミサ・典礼の準備をする香部屋を、いざ本番に合わせて月曜から調整室として、聖堂内にリモコンで作動する4台のカメラ、マイクなどの音響機器を設置した。当日は音響チェック、照明チェック、カメラテスト、そして配信チェックなどが行われ、着々と準備が進められた。

その調整室では、オルガン演奏に詳しいスタッフが楽譜を常時チェックしながら、手や脚の動きを追う4台のカメラスイッチを切り替えする指示を送っていたという。

なお、今回のライブ配信映像は期間中だけでなく、アーカイブとして記録されており、いつでも視聴できるようになっている。今後もアーレントオルガンの響きを楽しんでいただきたい。

 

香部屋が配信準備のブースに変身した

【関連記事】オルガンコンクールに関する報告は別のサイトをご覧ください。

https://st-gregorio.or.jp/【報告】第9回武蔵野市国際オルガンコンクールレ

https://st-gregorio.or.jp/審査員2人によるワークショップレポート(9月11日/

◆コンクールを後方から支援して

この4日間のため、聖グレゴリオの家ではすべての行事、オルガン練習室の貸し出しを中止し、オルガンコンクールのための会場作りに協力した。

コンクールを運営する主催者側の立場からすれば、楽器のオルガンだけがあればコンクールを成り立たせるのではない。とりわけ奏者が本番で良いパフォーマンスをするために準備が大切であることはいうまでもない。

何よりもまずオルガンである。1次予選では、武蔵野市周辺の教会に設置されているオルガンを借用してコンテスタントの練習に充てたと聞いている。こちらでは、先述のように3台の練習用オルガンの8人に提供したが、そのオルガンも調律やメンテナンスが事前に必要だった。

オルガンで大切な存在として欠かせないのが調律である。主催者側がアーレントオルガンの専門家である三橋利行さんが対応を要請していた。氏は10日午後から最終日までずっと待機して下さった。オルガンという楽器の特性は、気温や湿度の変化によって、わずかだが音程の変化や不具合が生じる。さらにオルガンが稼働する時間が少ないと不安定になったり、不具合が生じたりする。特に猛暑が続くなかでの開催だったため、慎重に扱う必要があった。朝9時前にエアコンを稼働し、夜の練習が終わるまで、聖堂内の温度を一定に保つことが最低限必要だった。ただ、「聖グレゴリオの家のアーレントはとても安定している」と太鼓判を押していたので、調律を安心して任せることができた。

オルガン以外にも、ライブ配信スタッフのリモートスタジオとなる調整室の確保や準備、コンテスタントの控え室、食事・休憩スペース、コンテスタントが演奏する際レジストレーションを担当するアシスタントの控室、コンクール審査員の控室、主催者の運営スタッフの控室には、配布するプログラム、のぼり、備品、グッズなどを保管しておく部屋の確保など、周到な準備が必要だった。終了後の撤収作業も、それぞれ時間を急ぎ慌しかった。

我々事務スタッフは普段、こうした本格的な貸し出しに携わる機会はほとんどない。特に海外に向けて発信する場でありトラブル発生だけは防ぎたいと思っていたので、ともかく4日間事故なく全うすることができ胸を撫で下ろしている。そして、こうした行事であればある程度一括して引き受けられる環境であることを実感した次第である。

後日談だが、2次予選を終えた翌日15日夕方、東久留米周辺は激しい雷雨に見舞われ一部地域では停電が発生した。こうした天候事態がコンクールの最中に起きなかったことも幸いだった(HH)。