【報告】オルガンに親しむ一日②を開催しました(9/23)
9月23日(土・祝日)に「オルガンに親しむ一日②」を開催しました。
「アーレントオルガンについて学び、アーレントオルガンを体験する」講座は、今年2月11日に1回目を開催し、それがとても好評だったことを受け、2回目を企画しました。この催しは、今年から聖グレゴリオの家の新理事に就任した椎名雄一郎氏と本学の岩崎真実子講師が企画立案し、社会と宗教の歴史、教会の発展、典礼の変化などの動向によってオルガン音楽がどのように進化してきたのか、その歴史を学びながら音楽体験することを企図したものです。
今回は全国各地から約50名が参加し、じっくりとアーレントオルガンの響きを傾聴する一日になりました。
まず、菅哲也本学講師から「オルガン奏法の基本」として、①オルガンの音が鳴る仕組み、②オルガンとピアノの奏法の違い、③タッチとリリース、④アーティキュレーション レガートとノンレガート、⑤ペダルの奏法についての解説からスタートしました。さらに、オルガン学の文献について紹介がありました。
続いて、今回の特別講師である椎名雄一郎氏からの解説と演奏です。「スウェーリンクからバッハへ」①では、オルガン音楽の流れとして北ドイツオルガン楽派について、ネーデルランド出身のJ. P. スウェーリンク(1562-1621)、H. シャイデマンの三大S、D. ブクステフーデ、G. ベーム、N.ブルーンスの三大Bなどを紹介しました。
特に、スウェーリンクの鍵盤音楽作品について、イタリアの鍵盤音楽から影響を受けた「トッカータ」、合唱作品にも通じる対位法的な作品「ファンタジア」、カトリック聖歌による作品、改革派で歌われる詩編歌の編曲、世俗歌曲の変奏曲、ルター派コラールなどの様式を紹介しました。
昼食時間には、グレゴリオの家に設置されている3台のオルガンを見学するツアーを行い、それぞれのオルガンについての説明を本科生が担当しました。
午後からは「スウェーリンクからバッハへ」②。ここでは、スウェーリンクからバッハへの流れについて、バロック期のハンブルクやリューベックといった北ドイツで作曲された三大Bのブクステフーデ、ベーム、ブルーンスによるコラールを用いた作品、イタリアの影響を受けたカンツォーナやトッカータなどの作品を聴きました。そして、とりわけ教会の礼拝において、これらの音楽がその後のJ. S. バッハの創作にどんな影響を与えたのか、その歴史について文献から紐解きました。
このセッションでは、本学講師の岩崎真美子、大木麻理、菅哲也、平井靖子の4氏が演奏を担当しました。
その後、グレゴリオ聖歌による「寝る前の祈り(Completorium)」を橋本周子所長に指導ししていただきました。
セミナーの最後は、椎名雄一郎講師による公開レッスンでした。受講生はあらかじめ選抜された4人で、聖グレゴリオの家教会音楽科で学んでいる本科生1人、同卒業生2人、オルガンゼミの受講生1人が、バッハの「オルガン小曲集 OrgelBüchlein」からそれぞれ1曲を選んで演奏し指導を受けました。
🔸Y講師の感想
「オルガンを学びに集まった方が大勢いらっしゃり、また、大変熱心な様子にこういった講座の意味があると思いました。また、私が指導している生徒さんからは、他の受講生のレッスンをきくと、椎名先生が言っておられること、また、普段私が指導している言葉の意味が良くわかってよい経験だったききました。私はお御堂のオルガンの響きに、いつも満たされて、感謝しています。この聖なる空間のよい響きがひとりでも多くの方々に受け取ってもらえるように、また、生徒さん達には正しく使ってこの響きをよく聞いてもらえるように努めたいと思っています」
🔹参加者からのアンケートより
「椎名先生は軽妙な語り口で最新の研究に基づいたお話で、バッハに至る流れがよくわかりました。
特に装飾コラールの成り立ち、北ドイツと中部ドイツからバッハの影響について詳しく解説していただいたのが今後オルガン練習に役立てそうです」
「作曲家の時代背景などがどのように音楽に反映されているかという話が興味深い。講師の先生方の演奏はすばらしかったです」
「どれも基本的なわかりやすい内容で勉強になりました。特に奏法は、初めて講義で聞くとなるほどと思えることがいろいろありました。タッチとリリースなど。実際に練習してそこに今日のような話を聞くと、そのステップが自分の中で結びつき、深めていけるのかとも思います。実際、作曲家の名前は譜面上お目にかかるだけで、このように歴史的流れや背景、また音楽的内容を知ることで、オルガンという楽器の思いがさらに深まります」
「オルガン奏法の基本では、漠然と弾いていた部分をクリヤにさせていただきました、タッチ&リリース、オルガンを弾く中で工夫していきたいと思いました。スウェーリンクからバッハに至る3人のSとBについて、少しずつ気が付くことができました」