【報告】審査員2人によるワークショップレポート(9月11日)

第9回武蔵野市国際オルガンコンクールの関連行事として、2次予選前の11日の夕方、聖グレゴリオの家聖堂で審査員2人によるワークショップが開催されました。

ワークショップはそれぞれ1時間半ずつ。

まず17時から、マティアス・マイヤーホーファーMatthias MAIERHOFER(フライブルク音楽大学教授=オーストリア)氏が「J.S.バッハと北ドイツオルガン楽派」と題するプレゼンテーションを行い、続いて受講生がV. リューベックの「前奏曲 ホ長調 LubWV7」を演奏しました。

10分の休憩をはさんで18時40分から、クシシュトフ・ウルバニアクKrzysztof URBANIAK(ウツチ国立音楽大学教授=ポーランド)氏が「北ヨーロッパのオルガン文化の新しい側面:バルト海地方の最近のオルガンプロジェクト~歴史的オルガンの修復と、歴史的様式による新しいオルガンの建造について~」と題してプレゼンテーションしたのち、D. ブクステフーデの「プレルデイウム ニ短調 BuxWV140」を受講生が演奏しました。

スピーチは英語でなされ、大塚直哉・東京芸大教授が通訳しました。

◆ワークショップに参加した本科生および卒業生の4人から集めた内容をもとにレポートにまとめましたのでお読みください。ワークショップのアーカイブはありません。

M.マイヤーホーファー氏(右)とクシシュトフ・ウルバニアク氏

🔽(1)マティアス・マイヤーホーファー氏(ドイツ)

マイヤーホーファー氏のプレゼンと通訳の大塚直哉氏

▶️「J.S.バッハと北ドイツオルガン楽派」

「ユルゲン・アーレントが修復したハンブルクの聖ヤコビ教会のオルガンを中心に、北ドイツ様式のオルガンや、北ドイツ楽派をスライドで紹介、イタリアやオランダなどの周辺地域との関連性、それらがどのようにJ.Sバッハに影響を与えたかをわかりやすく説明してくださいました。また、北ドイツ学派の音楽の構成について、修辞学を用いて体系化するという説明もあり、興味深い内容でした。公開レッスンではそれを受講生の演奏にも求め、受講生の演奏も『説得力を持って語る』ように変化していたのが素晴らしかったです」(Tさん)。

「講演では、何台かの北ドイツ様式のオルガンの写真を見せていただき、聖グレゴリオの家のオルガンがまさに北ドイツ様式であることを実感した。また北ドイツオルガン楽派の幻想様式のレトリックのお話はとても興味深いもので、その後の、受講生による演奏とレッスンでは、このレトリックを意識した演奏法のアドヴァイスも大変勉強になりました」(Yさん)。

「講演は、オルガンの歴史を学んだことがある人であれば常識の範囲だったとは思いました。短い時間でしたので、重要な事をお話しされていたのだと思います」(Zさん)。

◎受講生による公開レッスン:V.リューベック(1654-1740) 前奏曲 ホ長調 LubWV7

「私のC試験曲でしたので、とても懐かしく聴いた」Zさんによれば、「冒頭が難しく、右手→左手→ペダルと16部音符が繋がっていくが、先生はその16分音符だけを続けて弾いて練習していくことを提案しました。私もレッスンで同じ練習をしたほか、指摘されたのは受けたレッスンとほぼ共通していた。ただ、レジストレーションに言及が無かったのが残念でした」(Zさん)。

🔽(2)クシシュトフ・ウルバニアク氏(ポーランド)

プレゼンテーションするウルバニアク氏

 

 

 

 

松居直美コンクール実行委員長も挨拶

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

▶️「北ヨーロッパのオルガン文化の新しい側面:バルト海地方の最近のオルガンプロジェクト~歴史的オルガンの修復と、歴史的様式による新しいオルガンの建造について~」

「ポーランド出身のウルバニアク先生は、ポーランドや周辺のリトアニア、ラトビア、スウェーデンのオルガンやオルガン修復のプロジェクトについて紹介されました」(Tさん)。

「この講演では、あまり知ることのなかったポーランドやバルト海沿岸諸国のオルガンの修復に関して、歴史的楽器が抱える問題やこれからの可能性など知ることができました」(Yさん)。

「ポーランドのオルガンについて、私が全く知識がなかったので、歴史的オルガンがいくつもあることに驚きました。オルガンについて学ぶ時、東ヨーロッパは全く視野に入っていませんでした。今回の講義ではオルガンの紹介にとどまっていましたが、1600年代にそのようなオルガンが建造された歴史的背景について説明があれば、なおよかったです」(Zさん)。

◎受講生による公開レッスン:D.ブクステフーデ(1637-1707) プレルディウム 二短調 BuxWV140

「このレッスンでは、この曲というより、このオルガンを弾くために注意すべきことをアドヴァイスされていました。グレゴリオのアーレントオルガンは鍵盤が非常に軽く、繊細な楽器です。
今回の生徒さんは緊張されたのでしょうが、体にかなり力が入っていました。先生の指摘で姿勢を直し、指の使い方を直すことで、楽器の鳴りが変わりました。改めて、グレゴリオのアーレントを弾く難しさを感じました。先生の演奏は指先が繊細に鍵盤に触れている感じで、美しい音でした」(Zさん)。

「公開レッスンでは、座り方、ペダルの扱い方から、アーレントオルガンならではの演奏のヒントもおっしゃっていて、大変参考になりました。どちらの先生も『呼吸』について言及されていたのが印象的でした」(Tさん)。

「特筆したいことは、ウルバニアク氏の演奏の美しさです。講演のはじめと終わりに、演奏をしてくださいましたが、彼の指先から紡ぎ出される、アーレントのオルガンの音色はとても美しく、楽器も喜びに溢れて歌っているようで、心が震えました。受講生による演奏とレッスンにおいても、このような繊細な楽器を弾く際のポイントをわかりやすく説明してくださり、今後の学びに活かしていきたいと思いました」(Yさん)。

(3)ワークショップ全体の感想

最後に、ワークショップ全体についての感想を寄せていただきましたので紹介します。

「会場である聖グレゴリオの家のオルガンならではの内容だったと思います」(Yさん)。

「大塚先生の通訳がとてもわかりやすく、内容が理解しやすかったです。また先生方の演奏や、公開レッスンでの音色がとても美しく、驚きました。タッチや呼吸等々、教わってきたことではありましたが、公開レッスンを聴くと、それによって音色がとても変わることがよくわかり、改めてアーレントオルガンの繊細さや素晴らしさを感じさせられました」(Rさん)。

「オルガンは教会音楽科に入ってから始めたので、まだまだ初心者ですが、今後の自分の演奏に活かしたいと思うことばかりでした」(Tさん)。

ワークショップ中のロビー

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