聖書と典礼の研究

聖グレゴリオの家 宗教音楽研究所研究部門主催 連続講義

聖書の言葉と典礼の精神 ― 聖書と典礼の研究

(4/14 第2シリーズ開講)

2026年度の連続講義「聖書と典礼の研究」チラシはダウンロードできます

講義要項

2026年の連続講義は、聖グレゴリオの家の創立者であるゲレオン・ゴールドマン神父(1916-2003)の自伝「死の影・慰めの光」(宮本絢子訳)」を読むことから始めます。

ナチス政権下のドイツ兵士として従軍したゲレオン神父は、戦犯として捕らえられ収容所に拉致されるという試練に遭いました。彼は、戦闘中に敵軍の一斉射撃を浴びている最中に、いつも晚課で唱えていた詩編90の言葉が自分を守護していることに気づきます。「主の翼の影」にいる者は、死を怖れずに困難を必ず切り抜ける-その言葉は自叙伝の英訳版のタイトルにもなりましたが―聖務日課で唱えていた「聖書の言葉」に「慰めの光」を見いだしていたゲレオン神父は、戦犯として死刑判決を受けたにもかかわらず、その判決が取り消され、最終的には、1944年に敵国フランスの司教によって司祭に叙階されるという何とも不思議な経験をしたことを語っています。

1954年に日本に宣教師として派遣されたゲレオン神父は、東京の板橋教会の主任司祭となりましたが、戦後の貧しい日本人学生の奨学資金にするために自ら廃品回収作業を引受けたり、東京や軽井沢に教会堂や母子施設を新設したりするなど、八面六臂の社会奉仕活動をしたことで知られています。ゲレオン神父は、1978年に「聖グレゴリオの家宗教音楽研究所」を設立しましたが、神父の多彩で精力的な活動の原点には、グレゴリオ聖歌による伝統的なミサ典礼がありました。詩と音楽と祈りが統合されたミサ典礼こそが、すべての活動が「そこからそこへと」展開し収斂するキリスト者の生活の原点であるというのが神父の一貫した信念でした。

連続講義の2回目以降では、ゲレオン神父と同じ時代を生きた神学者たちの著作―とくハンス・ウルフ・フォン・バルタザールの「過越の神秘」、ロマーノ・ガルディーニの「典礼の精神」―をとりあげ、第二ヴァチカン公会議以降の三人の教皇、ヨハネ・パウロ二世、ベネディクト十六世、教皇フランシスコの回勅や使徒的書簡を手引きとして、「聖書の言葉と典礼の精神」について考えます。

秋学期には、旧約聖書の救世主キリストの預言詩をもとに作曲されたヘンデルのオラトリオ「メサイア」、福音書のイエス傳に立脚したバッハの「マタイ受難曲」など、キリスト教の宗教音楽をとりあげます。さらに、バッハの宗教曲とイエス傳の研究者でもあった神学者、アルベルト・シュヴァイツアーの思想と実践についても考察した後で、典礼の精神と日本的霊性の統合を試みた先人達の様々な試みを紹介します。(田中裕)


2026春学期日程

4/14  「翼の影」―グレゴリオの家創立者ゲレオン・ゴールドマン神父の自伝と回想

4/28  「過越の神秘」―ハンス・ウルフ・フォン・バルタザールの秘跡の神学

5/12  「希望の扉を開く」―ヨハネ・パウロ二世との対話

5/26  「典礼の精神」-ロマーノ・ガルディーニの典礼運動とベネディクト十六世

6/9  「イエスの切なる願い」-教皇フランシスコの使徒的書簡における典礼論

2026秋学期日程

9/29  「イエス・キリストの神」― ベネディクト十六世の聖書釈義と十字架の道行

10/13   「ナザレのイエス」― 福音の言葉の織りなす言語宇宙

10/27  「救世主の預言と受難曲」―ヘンデルの「メサイア」とバッハの「マタイ受難曲」

11/10 「キリスト神秘主義」―アルベルト・シュヴァイツアーの思想と実践

11/24 「日本の聖楽劇の試み」―典礼の精神と日本的霊性の統合にむけて


時間: いずれも火曜日 11時~12時30分
場所: 聖グレゴリオの家・ハッチハウス

この講座はリアル(会場)とリモート(Zoom)を併用します。

聖グレゴリオの家にいらしてくださっても、リモートでもご都合に合わせて聴講できます。やむをえず欠席なさる方も講義録画と資料の配信をご覧いただけます。


受講料(資料代等含む)お支払はいずれかをお選び下さい

①12,000円(2026年各学期5回分一括)

②24,000円(2026年春・秋全学期10回分一括)


《受講料の振込先は下記の通りです》※ 手数料はご負担願います。

*ゆうちょ銀行 口座番号 00120-8-61673

加入者名 宗教法人  聖グレゴリオの家

≪他金融機関からの振込用口座番号≫

〇一九(ゼロイチキュウ)店(019) 当座 0061673


お申し込みはこちらからどうぞ。

QRコードやフォームが使用できない方は申込書をお使いください。ダウンロードして記入いただくか、申込書の記載事項をメールに書き込んでいただいても構いません。

お書きいただいた内容をメール、FAX、郵送等で聖グレゴリオの家事務室までお問い合わせ・お申し込みください。

必ずメールアドレスをお書きください。

メールアドレス: info@st-gregorio.or.jp

TEL:042-474-8915 FAX:042-474-8832

〒203-0004 東久留米市氷川台2-7-12 聖グレゴリオの家


受付が済み次第、URLや受講票をお送りします。


講師:田中裕(聖グレゴリオの家理事、上智大学名誉教授)


<昨年開設したML掲示板>

詩編に聴くー聖書と典礼の研究 ML – Google Groups

https://groups.google.com/g/ml-bible-and-liturgy-study

2026年も使いますので、ここに皆様の質問や感想をお寄せください。


2025年の講義内容

ヘブライの民は詩と音楽によって神と対話してきました。聖書全体の中枢をなす詩編はキリスト教の典礼において根源的な泉となっています。聖書注解と典礼的考察を通して詩編を多角的に学んでいきましょう。

1)4/22  講義の目的・詩編のテキストと表題・ユダヤ教・カトリック教会・正教会の典礼における詩編の位置づけ

2)5/13  グレゴリオ聖歌の伝統:詩編51に聴く―灰の水曜日の懺悔と賛美

3)5/27 詩編118に聴く―ペテロの証し―受難の民の希望

4)6/10  詩編148に聴く―アッシジの聖フランシスコの祈り・ラウダート・シに寄せて

5)6/24  詩編150に聴く―復活祭のアレルヤ唱にとアウグスチヌスの詩編注解

6)  10/7 正教会の伝統―ラフマニノフの「晩禱」を手引きとして

7)  10/21 詩編1,2に聴く―キリスト中心的な釈義の伝統

8)  11/4 新約聖書の賛歌:シメオン賛歌と聖母(テオトコス)賛歌

9)  11/18 6つの詩編の詠唱と復活賛歌

10) 12/2 日本のキリスト者と詩編

2025年のチラシはこちらから


講義要項

けふよりは詩編百五十 日に一編読みつつゆけば平和来なむか 

(南原繁歌集『形相』所収)

80年前、無教会キリスト者の内村鑑三の平和主義から大きな影響を受けた南原繁の読んだこの短歌は、東京大空襲の戦禍のさなかに詠まれたものですが、それはまた、敗戦後の日本が、平和な国として再出発するには何をなすべきか、その理念と祈りを聖書の詩編にもとめたものでもありました。内村鑑三と南原繁の平和への願いを想起しつつ、『詩編に聴く―聖書と典礼」という連続講義を行う予定です。この講義は内村鑑三の連続講義『聖書の研究』を手本としていますが、私は、内村があまり問題としなかった「(ユダヤ教・東方キリスト教・西方キリスト教の)典礼のなかの聖書」という視点をあらたに付け加えました。

カトリックの「教会の祈り(新しい聖務日課)」では、詩編が中心的な位置を占めています。主日の典礼、毎日の聖務日課(時課)に参加する者は、詩編150編のすべてを、様々な形態で、朗唱することになるでしょう。キリスト者の祈りは、ユダヤ教の典礼を母体としていますが、排他的な民族主義を克服して、すべての民と被造物の救済を目指すカトリック信仰に基づいています。

聖グレゴリオの家で歌われるグレゴリオ聖歌のラテン語テキストは、初代のキリスト者の世界の共通語であったギリシャ語聖書(七〇人訳聖書)に基づいています。新約聖書のなかの旧約聖書の引用は、基本的には詩編も含めて、この七〇人訳ギリシャ語聖書によりますので、新約時代のキリスト者の信仰を理解するためには、ユダヤ教正典のヘブライ語テキストだけでなく、ギリシャ語テキストに基づくキリスト者の詩編解釈の伝統を知ることも必要となってきます。

私の連続講義は2025年の復活祭の後から開始し、全部で十回を予定しています。
詩編の構成・作者・表題・内容の分類・キリスト者の詩編解釈の伝統・近代語訳(英語欽定訳など)日本語訳の比較など、詩編釈義に伴う様々な諸問題を論じる予定です。カトリック教会の典礼ではグレゴリオ聖歌が中心的な位置を占めますが、この講義では、復活祭に関連する詩編、とくに「詩編51に聴く―灰の水曜日の懺悔と賛美」「詩編118に聴く―ペテロの証し―受難の民の希望」「詩編148に聴くーアッシジの聖フランシスコの祈り・ラウダート・シに寄せて」「詩編150に聴く―復活祭のアレルヤ唱」など、カトリックの典礼と聖務日課に関連の深い詩編を幾つか選んで詳しく解説します。また、七〇人ギリシャ語訳聖書の伝統を継承する正教会の典礼で詩篇がどのように歌われているかを知るために、日本でもよく知られているラフマニノフの「晚禱(徹夜禱)」を手引きとして、その背景にある正教会の典礼で歌われる詩篇と新約聖書の賛歌を解説します。(田中裕)


ぜひともこの機会をご活用ください