【報告】講演会:グレゴリオ聖歌の「衰退期」について 講師:花井 哲郎(7/26)

講演会:グレゴリオ聖歌の「衰退期」について

聖グレゴリオの家宗教音楽研究所の研究部門は、7月26日(日)15時より、古楽演奏家の花井哲郎氏による講演会を開催しました。


当研究所は典礼においても教育においてもグレゴリオ聖歌に関してはセミオロジーの研究を取り入れた実践が基本となっておりますので、あえて「衰退期」について学ぶのは意外に思われるかもしれません。古写本へのパレオグラフィカルなアプローチがなされるようになり、私たちはその恩恵を受けておりますが、足元から過去に遡及していくということを今回の講座で歌唱実践と共に行いました。

“Viderunt omnes fines terrae”というご降誕のミサのGradualeを例に17世紀のニヴェール版、メディチ版、20世紀初頭のポエィエ版、モクローによるリズム付加版、オルガン伴奏付、そして最新版聖歌集であるGraduale novum 2011で歌ってみました。中世から20世紀までグレゴリオ聖歌は記譜法も歌唱法も変化しながら歌い続けられますが、それはその時その時の典礼の脈絡のなかで、そのリアリティと時代様式のなかで最上と思われる歌唱が神に捧げられてきたのです。それらを中世からの「衰退」とみなしていいのか、というのが講師の問題意識です。

生きた祈りの歌であるグレゴリオ聖歌を21世紀を生きる日本人の私たちが古写本で歌うということはどういうことなのか、ここで顧みるのも意義あることではないでしょうか?

聖グレゴリオの家研究論集IVに所収された講師の論文<グレゴリオ聖歌の楽譜と演奏解釈の可能性―現場からの視点―>より引用します。

「典礼音楽としてどのようにあるべきか、あり得るのか、多くの可能性の中からどういう演奏の仕方を選び、そこにどういう真実を見出していくのか。演奏会ではない、聖歌本来の場である典礼のなかで、必ずしも専門的音楽家の集まりではない聖歌隊にどのような演奏ができるのか、その方向性を今やっと探り始めたばかりである。歴史には学ばないといけないが現代においてもやはりそれぞれに様々な状況がある。その中で教会音楽家として「古楽ではない」生きた祈りの歌であるグレゴリオ聖歌にふさわしい歌唱ができるよう、伝統を継承しながらも創造的に模索を続けていきたい」

文責 杉本ゆり   花井哲郎講師「グレゴリオ聖歌の衰退期について」。


「最初の記譜以来1000年以上におよぶグレゴリオ聖歌の歴史の中で、それぞれの時代に様々な演奏の様式があり、それに応じた楽譜が作られてきた。その変遷について実例を見ながら辿っていく。特に近代の「復興」以前の「衰退期」といわれる時代にはどのように歌われていたのか、またさらには最古の写本群の異なった角度からの解釈も楽譜に則して、その「衰退」の過程も中世の証言を元にして考えてみたい」


チラシはこちらからダウンロードできます

 


講師:花井 哲郎(はないてつろう)

古楽演奏家(オルガン、チェンバロ、指揮)、教会音楽家。ヴォーカル・アンサンブル カペラ音楽監督として中世・ルネサンス音楽の演奏を行い、ジョスカン・デ・プレのミサ曲全集を始め13枚のCDをリリース、各誌で推薦盤となる。古楽アンサンブル コントラポントのリーダーとして17世紀を中心としたバロック宗教音楽の演奏にも力を注いできた。フランス・バロック音楽を専門とする合唱団フォンス・フローリスを始め様々な古楽アンサンブルを指揮・指導、またグレゴリオ聖歌やルネサンス音楽に関する講習を続ける。元・国立音楽大学講師。フォンス・フローリス古楽院院長。